ウェブアクセシビリティの確保に当たって
ウェブアクセシビリティの確保・向上を考える場合、誰もが、ホームページ等で提供される情報や機能を支障なく利用するために、どのような点に配慮するべきであるかを知っておかなければなりません。
情報を提供する側がウェブアクセシビリティに配慮して適切に対応していないと、高齢者や障がい者等が、災害時の情報が取得できなかったり、パソコンによる手続きが実施できなかったりという問題が発生します。これにより、社会生活で多大な不利益が発生したり、また生命の危機に直面したりする可能性があります。公的機関のホームページ等で提供されている情報が特定の人に利用できないという状況が起きないように、情報提供者はウェブアクセシビリティに配慮した、ホームページ運用が必要です。
そこで本資料はウェブアクセシビリティの確保が必要となるホームページ管理者に向け、JISX8341-3の基準を示し、それぞれの項目がどのような利用環境を想定しているか、示しております。
各基準を達成するために必要な対応については別に定めます。(各項目の採番は、JIS X 8341-3:2016の達成基準の番号を示しています。)
共通
状態
配慮すべき点
適合レベルAおよびAA
- 非テキストコンテンツの達成基準(1.1.1)
- 音声だけおよび映像だけ(収録済み)の達成基準(1.2.1)
- キャプション(収録済み)の達成基準(1.2.2)
- 音声解説またはメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準(1.2.3)
- キャプション(ライブ)の達成基準(1.2.4)
- 音声解説(収録済み)の達成基準(1.2.5)
- 情報および関係性の達成基準(1.3.1)
- テキストのサイズ変更の達成基準(1.4.4)
- 文字画像の達成基準(1.4.5)
- タイミング調整可能の達成基準(2.2.1)
- 3回のせん(閃)光、またはしきい(閾)値以下の達成基準(2.3.1)
- リンクの目的(コンテキスト内)の達成基準(2.4.4)
- 複数の手段の達成基準(2.4.5)
- 見出しおよびラベルの達成基準(2.4.6)
- フォーカスの可視化の達成基準(2.4.7)
- ページの言語の達成基準(3.1.1)
- 一部分の言語の達成基準(3.1.2)
- 一貫したナビゲーションの達成基準(3.2.3)
- 一貫した識別性の達成基準(3.2.4)
- エラーの特定の達成基準(3.3.1)
- ラベルまたは説明の達成基準(3.3.2)
- エラー修正の提案の達成基準(3.3.3)
- エラー回避(法的、金融およびデータ)の達成基準(3.3.4)
- 構文解析の達成基準(4.1.1)
適合レベルAAA- メディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準(1.2.8)
- 音声だけ(ライブ)の達成基準(1.2.9)
- 文字画像(例外なし)の達成基準(1.4.9)
- 再認証の達成基準(2.2.5)
-
3回のせん(閃)光の達成基準(2.3.2)
- 現在位置の達成基準(2.4.8)
- リンクの目的(リンクだけ)の達成基準(2.4.9)
- セクション見出しの達成基準(2.4.10)
- 一般的ではない用語の達成基準(3.1.3)
- 略語の達成基準(3.1.4)
- 読解レベルの達成基準(3.1.5)
- 発音の達成基準(3.1.6)
- ヘルプの達成基準(3.3.5)
- エラー回避(全て)の達成基準(3.3.6)
画面が見えない人(全く目が見えない人)
状態
利用環境
多くの人が音声読み上げソフト(スクリーンリーダ)と呼ばれるソフトを使用しています。このソフトはページのタイトル、テキスト(文字)情報、画像の代替文字(alt属性)などを読み上げる機能を持っており、この「音声」を聞くことでページの内容を理解することができます。また、点字ディスプレイを使用する場合もあります。なお、画面の見えない人はマウスでの操作が難しいため、キーボードにより操作を行っています。
配慮すべき点
適合レベルAおよびAA
- 非テキストコンテンツの達成基準(1.1.1)
- 意味のある順序の達成基準(1.3.2)
- 感覚的な特徴の達成基準(1.3.3)
- 色の使用の達成基準(1.4.1)
- 音声の制御の達成基準(1.4.2)
- キーボードの達成基準(2.1.1)
- キーボードトラップなしの達成基準(2.1.2)
- タイミング調整可能の達成基準(2.2.1)
- 一時停止、停止および非表示の達成基準(2.2.2)
- ブロックスキップの達成基準(2.4.1)
- ページタイトルの達成基準(2.4.2)
- フォーカス順序の達成基準(2.4.3)
- リンクの目的(コンテキスト内)の達成基準(2.4.4)
- 見出しおよびラベルの達成基準(2.4.6)
- フォーカスの可視化の達成基準(2.4.7)
- フォーカス時の達成基準(3.2.1)
- 入力時の達成基準(3.2.2)
- ラベルまたは説明の達成基準(3.3.2)
- 名前(name)、役割(role)および値(value)の達成基準(4.1.2)
適合レベルAAA
- キーボード(例外なし)の達成基準(2.1.3)
- タイミング非依存の達成基準(2.2.3)
- 割込みの達成基準(2.2.4)
- リンクの目的(リンクだけ)の達成基準(2.4.9)
- 要求による変化の達成基準(3.2.5)
- ヘルプの達成基準(3.3.5)
画面が見えにくい人(眼鏡でも矯正できない強度な近視などの人)
状態
利用環境
至近距離から画面を見たり、ブラウザ(※1)で文字サイズを拡大したり、配色を変更したりして利用しています。または画面拡大ソフトを利用する場合もあります。
配慮すべき点
適合レベルAおよびAA
- 非テキストコンテンツの達成基準(1.1.1)
- 意味のある順序の達成基準(1.3.2)
- 感覚的な特徴の達成基準(1.3.3)
- 色の使用の達成基準(1.4.1)
- 音声の制御の達成基準(1.4.2)
- コントラスト(最低限レベル)の達成基準(1.4.3)
- テキストのサイズ変更の達成基準(1.4.4)
- 文字画像の達成基準(1.4.5)
- キーボードの達成基準(2.1.1)
- キーボードトラップなしの達成基準(2.1.2)
- 一時停止、停止および非表示の達成基準(2.2.2)
- ブロックスキップの達成基準(2.4.1)
- ページタイトルの達成基準(2.4.2)
- フォーカス順序の達成基準(2.4.3)
- リンクの目的(コンテキスト内)の達成基準(2.4.4)
- 見出しおよびラベルの達成基準(2.4.6)
- フォーカスの可視化の達成基準(2.4.7)
- フォーカス時の達成基準(3.2.1)
- 入力時の達成基準(3.2.2)
- ラベルまたは説明の達成基準(3.3.2)
- 名前(name)、役割(role)および値(value)の達成基準(4.1.2)
適合レベルAAA
- コントラスト(高度レベル)の達成基準(1.4.6)
- 視覚的提示の達成基準(1.4.8)
- 文字画像(例外なし)の達成基準(1.4.9)
- キーボード(例外なし)の達成基準(2.1.3)
- タイミング非依存の達成基準(2.2.3)
- 割込みの達成基準(2.2.4)
- リンクの目的(リンクだけ)の達成基準(2.4.9)
- 要求による変化の達成基準(3.2.5)
- ヘルプの達成基準(3.3.5)
色の識別が難しい人
状態
色の違い(同系色)が分かりにくい、特定の色が違う色や、最も重い場合は白黒に見える、加齢により色覚に変化を生じている場合など
利用環境
モニターのコントラストや輝度を調整したり、文字色と背景色を変換したりしてウェブを利用しています。
配慮すべき点
適合レベルAおよびAA
- 色の使用の達成基準(1.4.1)
- コントラスト(最低限レベル)の達成基準(1.4.3)
- 一時停止、停止および非表示の達成基準(2.2.2)
- フォーカスの可視化の達成基準(2.4.7)
適合レベルAAA
- コントラスト(高度レベル)の達成基準(1.4.6)
音が聞きにくい人
状態
利用環境
基本的には健常者と同様に利用していますが、OS(※2)のユーザー補助機能などを利用して、警告音を画面点滅などで表示するなどの工夫をして利用しています。また、問い合わせなどにはファックスを利用することが多いです。
配慮すべき点
適合レベルAおよびAA
- 非テキストコンテンツの達成基準(1.1.1)
- 音声だけおよび映像だけ(収録済み)の達成基準(1.2.1)
- 音声の制御の達成基準(1.4.2)
マウスやキーボードの操作が難しい人
状態
両手が全く動かない(動かしにくい)、片手や限られた指しか動かない、手や体が震える、手が動かせる範囲が狭いなど
利用環境
マウス操作、手によるキー入力、複雑・頻繁な操作や入力ができなかったり、困難な場合があるため、ゆっくりとした動作での操作、スティックを口にくわえての操作、足や頭での操作を行ったり、トラックボール(※3)やスイッチなどの補助機器を使用するなどしてウェブを利用しています。また、テキストを入力する際には音声入力やオンスクリーンキーボードなどを利用することがあります。
配慮すべき点
適合レベルAおよびAA
- 意味のある順序の達成基準(1.3.2)
- キーボードの達成基準(2.1.1)
- キーボードトラップなしの達成基準(2.1.2)
- タイミング調整可能の達成基準(2.2.1)
- 一時停止、停止および非表示の達成基準(2.2.2)
- ブロックスキップの達成基準(2.4.1)
- ページタイトルの達成基準(2.4.2)
- フォーカス順序の達成基準(2.4.3)
- 複数の手段の達成基準(2.4.5)
- 見出しおよびラベルの達成基準(2.4.6)
- フォーカス時の達成基準(3.2.1)
- 入力時の達成基準(3.2.2)
- ラベルまたは説明の達成基準(3.3.2)
- 名前(name)、役割(role)および値(value)の達成基準(4.1.2)
適合レベルAAA
- キーボード(例外なし)の達成基準(2.1.3)
- タイミング非依存の達成基準(2.2.3)
- 割込みの達成基準(2.2.4)
- 要求による変化の達成基準(3.2.5)
- ヘルプの達成基準(3.3.5)
そのほか配慮が必要な人
状態
たとえば、強い光や点滅などを受けると発作を起こすことがある光の刺激に過敏な人、予期せぬ動作にパニックを起こすことがある人、記号や画像によらなければパソコンを操作できない人など、さまざまな人がいます。
そのほか、パソコン操作に慣れていない人、難しい漢字や語句が理解できない人、通信速度が遅い(速くない)環境で利用している人、特定のソフト(ワープロ・表計算等)を持っていない人など、さまざまな状況でウェブを利用している人がいます。
ここでは、そうしたウェブサイトを利用する上で支障となりうる状況について、個々にすべてを取り上げて配慮内容を示すことはできないが、そのような利用状況を意識して、ウェブサイトの提供に努めていく必要があります。
用語集
(※1)ブラウザ(browser)ウェブブラウザともいう。ウェブページを閲覧するためのソフト。代表的なものに「InternetExplorer」や「Firefox」、「GoogleChrome」などがあるほか、テキストしか表示できない環境でも利用できるテキストベースのウェブブラウザや、画面を読み上げる音声ブラウザなどもある。
(※2)OS(オー・エス;OperatingSystem)キーボード入力や画面出力などの入出力管理、ファイルやメモリの管理など、パソコンを動かすための基本的なソフトウェアのこと。
(※3)トラックボール(trackball)マウスの代わりを果たす入力機器の一種。マウスを逆さまにしたような構造をもち、操作面側のボールを手で転がしてカーソルを移動させることが可能。マウスと異なり、固定位置で操作できることが特徴。そのほか、補助的な入力機器として、触れることや呼気で信号を送ることができるスイッチなどを併用する場合がある。